独立行政法人 国立科学博物館様
課題
日本館の講堂、地球館の講義室で、リアルとオンラインによるハイブリッド型の講演を行いたい
解決策
博物館内での来場者への講演はもちろん、同時にYouTubeライブやオンラインセミナーなどのライブ配信を行える映像・音響システムを構築
今後はハイブリッド講演が可能なこのシステムを用いて、多拠点間を結んだワークショップなども行えるようになります
背景
講堂や講義室から多種多様な情報を発信できる環境へ
様々な分野の研究者が所属し、膨大な標本資料や研究成果を蓄積する国立科学博物館様。それらの財産は貯蔵・展示されるだけでなく、国内の大学で研究する人や学会、他の博物館、企業など、国内外の様々な機関とも連携することで、多様な学習支援につながっています。そしてこの社会と科学のコミュニケーションを促進する場として、日本館の講堂、地球館の講義室は大きな役目を果たしてきました。しかしその施設は約20年間の使用で経年劣化しており、時代に合わせたデジタル化への更新が求められていました。
導入システムの概要
会場とオンラインの講演で活用できる映像・音響機器
国立科学博物館様は、館内での講演はもちろん、YouTubeに「かはくチャンネル」を持つなど積極的な情報発信を行っており、頻繁に会場での開催とYouTubeライブやオンラインセミナーでのライブ配信によるハイブリッド型の講演を実施されています。しかし、オンラインを活用する場合、講堂、講義室の映像・音響設備がデジタル化されていないため、機材は仮設で用意する必要がありました。また経年劣化による不具合で貴重な講演の開催中に支障が出る可能性がありました。そこでリアルとオンラインでの講演を同時に行えるハイブリッド型の運用を円滑に行える映像・音響機器に更新。貴重な財産の有効な活用を実現しました。
導入後の効果
明瞭な拡声を実現するDECT準拠方式の1.9GHz帯デジタルワイヤレスマイクシステム
講演者の発言、司会者の進行、来場者の質問などで使うマイクロホンに、日本館の講堂にはダイナミック型4本、タイピン型4本が、地球館の講義室にはダイナミック型2本、タイピン型2本の1.9GHz帯デジタルワイヤレスマイクシステムが採用されました。DECT準拠方式のワイヤレスマイクシステムなので、自動的に安全なチャンネルを選択 して通信を行うことができ、明瞭な拡声が可能です。またハンドヘルドタイプのダイナミック型ワイヤレスマイクロホンWX-ST250は、マイク感度を声の大きさに合わせて3段階で設定できるので、話者が変わってもその声に合わせた聞き取りやすい音声の設定を可能にします。一方、タイピン型ワイヤレスマイクロホンWX-ST400は、標本や化石などを手に持って説明する際もスムーズに解説が行えます。
Dante®で接続されたサラウンドシステムの構築とオンラインでの質疑応答時にエコーを抑えるデジタルミキサー
様々なコンテンツに対応できるように、日本館の講堂は5.1チャンネル、地球館の講義室は2.1チャンネルのサラウンドに対応。それを実現したのが、それぞれ1台ずつ採用されたデジタルミキサーWR-DX200DANです。WR-DX200DANからデジタルパワーアンプWP-DM912 [販売完了] へは、音声信号をDante®で送っており、サラウンドの出力数 をカバーしています。また、フェーダーユニットWR-PU200を使って映像・音声の各チャンネルの操作が可能で、WR-DX200DANにはエコーキャンセラーユニットWR-PC200も装備されており、リモートとリアルが参加するハイブリッド運用での双方向の発言で起こりがちなエコーを抑えることで、明瞭な音声でのコミュニケーションを実現。講演の活性化に役立ちます。さらに、スピーカーにはRAMSA30cm2ウェイスピーカーWS-AR200-Kを前方の左右へ常設。日本館の講堂では追加で3台の同スピーカーを三脚で配置して、RAMSAサブウーハーWS-HM518Lと合わせてサラウンドのコンテンツ再生に対応することが可能です。また、地球館の講義室ではWS-HM518Lを活用したサラウンド対応の音響システムを構築しました。
[日本館講堂]
約140名の収容が可能な日本館の講堂
30,500 lmの明るさで表示する3チップDLP®レーザープロジェクターPT-RQ35KJ
講堂の後方に設置されたAV操作卓。右端がAV機器を一括操作できるタブレット端末
ライブスイッチャーAV-UHS500とマルチビュー画面
講堂と講義室の室内の明るさを変えることなく明瞭な映像や画像を表示するプロジェクター
日本館の講堂には、以前は10,600lmのプロジェクターが導入されており、鮮明に画面を表示するためにカーテンを閉め、照明を落とした状態で使用する必要がありました。しかしその環境下では、講演者が話をしている際に講演者の顔が見えづらくなってしまい、改善が必要でした。この状況を解決するため、機器更新時に30,500lmの3チップDLP®レーザープロジェクターPT-RQ35KJが採用されました。また、地球館の講義室には、天井照明の明るさに負けないよう高輝度20,000lmの3チップDLP®レーザープロジェクターPT-RQ25KJが採用されています。4K解像度で美しい色再現が可能なため、プレゼンテーション資料の明瞭な表示はもちろん、コンテンツの魅力が伝わる優れた演出力も備えており、講演を一層魅力的にします。
館内で展示案内などを映し出す65型の4K解像度の液晶ディスプレイ
展示物が置いてあるエリアに案内などを表示するために高画質対応の4K UHD液晶ディスプレイTH-65SQE1Jが6台採用されました。展示場所の演出によって、明るく照らされた場所や暗く照明を抑えた場所など様々な状況が想定される同館内で、そのすべての環境に対応するためには500cd/m²以上の輝度が求められ、その条件をクリアした4K対応のディスプレイです。また、長時間運用に適した業務用パネルの使用により24時間の連続稼働に対応できる信頼性も選ばれた大きな理由のひとつです。
3台のPTZリモートカメラと1台の広画角のリモートカメラで4Kの映像撮影を円滑にワンマンオペレーション
YouTubeライブやオンラインセミナーなど、ライブ配信の視聴者へ送る映像を撮影するために、3台の4KインテグレーテッドカメラAW-UE100Wと三脚に乗せられた4KインテグレーテッドカメラAW-UE4WGNを配備。AW-UE100Wは、講演者と司会者、質問者を撮影し、対象に動きがある際も独自技術のダイレクトドライブモーターによる超低速域の安定動作で、静粛な会場において静かな動作で対象をとらえることが可能です。また、AW-UE4WGNは会場前方から後方に向けて来場者を撮影。映像をライブ配信側に表示することで会場の雰囲気などを共有するために使われます。映像は4Kで撮影され、AW-UE100Wは12G-SDIで、AW-UE4WGNはHDMIでライブスイッチャーAV-UHS500へ送出されます。
ライブ配信やオンラインセミナーでの映像送出に対応する4K対応の一体型ライブスイッチャー
カメラの操作やPinPなどの演出は主に専用に設計されたタブレット端末で行われますが、細かい操作が必要な際はオペレーターによってAV-UHS500で操作するなど、講演内容によって柔軟に使用することが可能です。コンパクトな一体型でありながらハイエンドモデルに迫る基本機能を備え、その豊富な機能で4Kやライブ配信に対応した同スイッチャーは、様々なコンテンツを提供する際のスムーズな運用に貢献します。また12G-SDI、3G-SDI、HDMIなど多彩なインターフェイスに対応しているのでカメラ側からの出力へも柔軟に対応することができます。
[地球館 講義室]
約30名の収容が可能な地球館の講義室
スクリーンの下に置かれた2台のRAMSAサブウーハーWS-HM518L
ワイヤレスマイクロホンは4本使用可能
動作性に優れた4KインテグレーテッドカメラAW-UE100W
地球館の地球史ナビゲーターに採用された ブレンディングに適したプロジェクター
地球館の展示全体をつなげるシンボルゾーンである地球史ナビゲーターには、美しい映像を表示する8,500lmの1チップDLP®レーザープロジェクターPT-RZ890JLBを8台採用。輝度や色のバラツキが少なく、マルチスクリーン投写においてシームレスな映像を表示することが可能な映像の均一性に優れたプロジェクターです。3台で1枚のスクリーンに投写するセッティングを2か所、2台で1枚のスクリーンへ投写するセッティングを1か所と、合計3枚の巨大スクリーンにコンテンツを表示。地球をテーマにした壮大なコンテンツを臨場感のあるダイナミックな映像で演出しています。
[地球館 地球史ナビゲーター]
巨大スクリーンに投影する1チップ DLP®レーザープロジェクター PT-RZ890JLB
1チップDLP®レーザープロジェクター PT-RZ890JLBとRAMSA 12cm コーン形スピーカーWS-M10-K
日本館 講堂 システム構成図
※YouTubeは Google LLCの商標です。
お客様の声
今後はハイブリッド講演が可能なこのシステムを用いて、多拠点間を結んだワークショップなども行えるようになります。
国立科学博物館は1877年に創立された日本で最も歴史のある博物館の一つで、自然史・科学技術史に関する国立の唯一の総合科学博物館です。このたび設備を整えることができましたので、この豊富な資産や研究成果を生かした、ハイブリッドでの講演や会議、学会などへの活用を行っていきたいと考えています。さらに、今後はハイブリッド講演が可能なこのシステムを用いて、多拠点間を結んだワークショップなども行えるようになります。各会場では対面でのイベントを開催し、そのイベントにおける成果を全体で共有するといった運用を想定していますが、ハイブリッド講演や配信が可能であるからこそ実現できるイベントの形だと考えています。
お客様紹介
地球と人類の望ましい関係について考察
1877年(明治10年)に創立された日本で最も歴史のある博物館の一つ で、自然史・科学技術史に関する国立の唯一の総合科学博物館です。上 野本館は、「地球生命史と人類」をテーマとする地球館と「日本列島の自然と私たち」をテーマとする日本館で構成。地球規模課題を含む地球や生命、科学技術に対する認識を深め、地球と人類の望ましい関係について考察することに貢献してします。
■上野本館所在地:東京都台東区上野公園7-20
RAMSA30cm2ウェイスピーカー WS-AR200-K/-W
高能率100dB(1W/1m)、高耐入力400W(連続プログラム)。高音質と柔軟な設置を両立させるラウンド・トラペゾイドフォルム、剛性を高める樹脂製エンクロージャーを採用。
3チップDLP®レーザープロジェクター PT-RQ35KJ
30,500 lm※1の明るさ、最大4K解像度、赤色・青色レーザーによる美しい色再現を世界最小最軽量※2ボディに集結。
※1 工場出荷時における本製品全体の平均的な値を示しており、JIS X 6911:2015 データプロジェクタの仕様書様式に則って記載しています。測定方法、測定条件については附属書Bに基づいています。 ※2 2020年12月現在。26,000 ~ 35,000 lm のレーザープロジェクターにおいて。公称の質量および外形寸法値に基づいています。
3チップDLP®レーザープロジェクター PT-RQ25KJ
世界最小・最軽量※1 ボディから迫力の映像を投写。20,000 lm※2 3チップDLP® 4Kプロジェクター。
※1 2022年10月現在。16,000 lm 以上のDLP®方式レーザープロジェクターにおいて。公称の質量および外形寸法値に基づいています。
※2 工場出荷時における本製品全体の平均的な値を示しており、JIS X 6911:2021 データプロジェクタの仕様書様式に則って記載しています。測定方法、測定条件については附属書B に基づいています。
4Kインテグレーテッドカメラ AW-UE100W
NDI®※1、SRT※2、FreeD※3をはじめとした様々なIP伝送プロトコルに対応。4K/60p※4の高画質映像を用いた柔軟な映像制作を実現。
※1:NDI®とは、米国NewTek社によって開発されたIP利用における新しいライブ映像制作ワークフロー支援プロトコルです。ここでのNDI®は、High bandwidth NDI®、NDI®|HXはHigh efficiency low bandwidth NDI®|HXを意味します。NDI®はNewTek, Inc. の米国およびその他の国における登録商標です。ファームウェアver1.56以降は、NDI®|HX Version2に対応しております。ご利用にはアップデートが必要な場合があります。
※2:Secure Reliable Transport の略。※3:FreeDとは、AR/VRシステム用のカメラトラッキングデータを出力するプロトコルです。※4:実際の出力フォーマットはUHD(3840×2160)59.94p。